コラム
「もし、“介護が必要ない1年間”を買えるとしたら、あなたはいくら払いますか?」
突拍子もない質問に聞こえるかもしれません。
しかし、これは単なる比喩ではありません。実際に、医療や介護の分野では「いかに要介護の期間を短くし、自立して生活できる時間を延ばすか」が大きな課題になっています。
そしてその答えの一つが、私たちが毎日過ごす「住まい」なのかもしれません。
住まいの断熱性能を高めることが、健康寿命を延ばし、介護のリスクを減らす。そんな研究成果が国内外で数多く報告されているのです。
まず現状を見てみましょう。
日本の住宅ストックの9割は、WHO(世界保健機関)が推奨する「冬季室温18℃以上」を満たしていないと言われています。
特に築年数の古い住宅は断熱性能が低く、冬の朝は室内が10℃前後まで下がることも珍しくありません。
その結果どうなるでしょうか。
こうした「住まいの寒さ」が、私たちの健康をじわじわと蝕んでいます。
慶應義塾大学の伊香賀俊治先生らが進める「スマートウェルネス住宅等推進調査」では、全国数千戸の住宅で断熱改修の効果を検証しています。そこから明らかになった事実は驚くべきものです。
断熱改修後、高齢者の起床時血圧は平均で5mmHg低下。特に高血圧の人では7.7mmHgも下がったという結果があります。
これは薬に頼らずに血圧をコントロールできることを意味し、脳卒中や心疾患のリスク低減につながります。
居間の床付近の温度が18℃以上の住宅では、18℃未満の住宅に比べて転倒リスクが半分以下になると報告されています。
特に高齢者にとって転倒は、要介護状態への大きな入り口です。暖かい住まいは、その危険を回避する「見えない手すり」とも言えるでしょう。
さらに衝撃的なのは、「家が2℃暖かいだけで、自立して生活できる期間が約3年延びる」という研究結果です。
これは介護費用の削減だけでなく、本人や家族にとってかけがえのない時間を増やすことを意味します。
ここで少し経済的な視点に立ち返ってみましょう。
要介護になると、介護保険サービスや医療費が発生します。公的保険である程度カバーされるとはいえ、実際には自己負担が年間数十万円に上るケースも珍しくありません。
また、家族の介護負担は金額に換算できないほど大きい。仕事を辞めざるを得ない「介護離職」も社会問題になっています。
一方で、断熱リフォームの費用は数百万円規模。確かに安い投資ではありません。ですが、もしそれによって介護を数年遅らせることができるなら――。
「介護しない1年間」の価値を考えたとき、その投資は決して高すぎるものではないのではないでしょうか。
断熱改修がもたらすのは高齢者の健康だけではありません。
つまり、暖かい住まいは「家族全員のQOL(生活の質)」を底上げしてくれるのです。
国もこの流れを後押ししています。
つまり、「暖かい住まいで健康寿命を延ばす」ことは、すでに国策になっているのです。
改めて問いかけます。
「1年間、介護しない生活にいくら払えますか?」
暖かい住まいは、その答えの一つになり得ます。断熱リフォームは単なる光熱費削減のための工事ではありません。
そしてそれは、あなたや家族の「介護しない時間」を増やすことにつながります。住まいは“最大の医療”です。
次の住まいの選択やリフォームを考えるとき、「介護しない生活を買う」という視点を、ぜひ持っていただきたいと思います。
「暖かくなったらリフォームをしようかな…」と考えている方は、早めの計画がおすすめです。
もちろんSANKENでも対応可能ですので、寒い家について不安のある方はお気軽にご相談ください!